おはようございます。
 今朝の那覇は、トップページでご覧になった写真の通りです。晴れているのか微妙ですね。先週末から長袖か半袖か、迷うようになりました。「え? 沖縄で長袖?」なんて、よく言われます。

沖縄移住2年目の方との会話あるあるですが、
「今年の沖縄は寒いですね。」
「さあ、どうでしょう。昨年と同じくらいだと思いますよ。」
「ええ? そんなはずはない。昨年の今頃は私は半袖を着ていましたよ。」
「そんなはずはない。わたしは昨年の今頃もナガソデを着ていましたヨ。」
人間の感覚というヤツはですね、とにかく主観的で曖昧なものなのですよ。そして人間は、自分の変化には気づきにくいものです。

 先週末に「残業」について記事を掲載しました(その記事はコチラをクリック)が、その記事をお読み頂いた方から、こんなご意見がありましたm(__)m。

「現場の変遷は私も見てきたが、昔とそれほど変わっていないですよ。やっぱり仕事は人を磨くところから始まります。」

この後のやり取りを書く前に申し上げておきますが、この方(仮にAさん)はある企業の代表者で、ポッと出の私など足元にも及ばない素晴らしい経営者です。
ちなみにAさんにはこのやり取りを記事にするかもしれないとお話ししました。

「Aさん、あなたが現場の直接作業から離れて、どのくらいになりますか? つまり経営ではない直接生産部門の業務や、経理など間接部門でも帳簿入力とかそういう実務の作業です。そういう業務から離れてどれくらいの時間が経ちましたか。」

「そうですねえ。15年くらいは経つでしょうか。」

「15年。スマホが誕生する前に直接作業を離れていますね。」

「え。15年前はスマホはありませんでしたか。」

「iPhoneが日本で発売されたのは2008年です。あなたはそれより前に実務を離れて経営に専念されるようになっている。ということですね。」

「ほほー。言われれば、そういうことになりますね。」

「その間に一般人の間ではフィルムカメラはデジタルカメラに取って代わり、さらにはスマホに引き継がれました。いまではフィルムカメラは市場の0.1%もシェアできていません。ほかにも御社の現場に関係ありそうな〇〇は××に、△△は◇◇に……(中略)、で、営業現場ではZoomを始めとした〇〇が■■に……(以下略)」

「はいはい、聞いてみると私も相当な恩恵を受けておりますな。」

「昔は、GPSで営業車両や営業社員の行動を追跡することはできなかった。今はできます。これは過剰管理であって違法じゃないかとわたしは考えていますが、技術的には実現しています。社員のパソコンの作業内容を追いかけることもできる。これも過剰管理だと思いますが。売上管理もほぼ即時的に処理できる。」

「おっしゃる通りです。わが社も相当恩恵を受けています。」

「そして業務1件当たりにかかる時間が減っている。」

「合理化ですな。生産性も上がっている。生産効率も。」

「だから、たとえば営業社員ひとりあたりが抱える案件数も増えている。」

「そうですな。」

「営業社員は移動途中にクルマを停めて、海辺でタバコを一服することすら監視されているかもしれない。」

「そこまではやりませんよ。これからもそのつもりはない。」

「そうですね。ここで考えて頂きたいのは、仕事が効率化されすぎていて社員一人当たりの担当案件数や業務量が増えすぎていないか、ということです。売上や業績ではないですよ。担当案件数や業務量です。Aさんが現場にいた頃と比べて、いかがでしょうか。そういうところを確認されてはいかがでしょうか。と、申し上げたわけです。ほかにも経理部門や他の間接部門などの合理化も進んでいますが、そのために幾つもの業務を一人の社員が抱えすぎていないか、ということです。御社の業績成長線と会社規模の拡大曲線(社員数等)はどうでしょう。バランスは取れていますか?」

「……ちょっと見てみないと分かりませんね。」

「とある会社で、社員がひとり辞めたくらいでは補充しない方針でやっていたのが、気がついたら10年で営業社員が半減していて、取引先の数も半減していた、という話があります。定期採用も新卒採用もやらない会社だったので社員は減っていきますが、それでも数年間は業績は下がらなかった。」

「そんなバカな……社員がそんなに減っても業績が下がらないなんて、有り得ない。」

「ここが不思議なところですが、タイミング良くデジタライズを中心に社内の合理化が進んだことがひとつ、また営業トップの判断で営業活動に手間のかかる民間案件ではなく、予算規模の大きな公共事業を受注する方針にシフトしていったのがひとつ、結果として、その会社は……いや、まだ存続していますが、毎年が一発勝負です。成長曲線なんか書けません。未来予測もできません。足元が覚束ないからです。」

「それはまた……。」

「御社の社業、提供する商品やサービスは15年前と変わっていないでしょう。もちろんより良い商品やサービスに進化はしているはずです。しかし、それを市場に提供するまでの社内プロセスは、商品やサービスの進化以上に変わっているでしょう。その社内プロセスの変化が具体的に社員の業務内容をどのように変えたのか、Aさんはおそらくご存知ない。これは、経験していないから仕方のないことです。その時代に現場を担当していない世代なのだから、当たり前のことです。Aさんが悪いわけではないし、現場が悪いわけでもない。」

「おっしゃっている話は分かるような気はしますが、少し大げさではないですか。」

「はい、大げさです。余計な心配して提案申し上げるのがわたしの仕事ですから。ひとつ言えることは、この先は人口が減っていく時代ですので、人材採用はますます買い手市場になっていく。となると、求職者に選ばれない企業は自然に消えていく。そういう未来がそこまで来ている。と、いうようなことが想像できます……よね?」

というようなやり取りがございました。

 人間はどこまでも新しいスキルを学べるわけではありません。スキルの習熟度をタテ軸、スキルの幅を広げることをヨコ軸とした場合、タテにかける時間、ヨコにかける時間は、合計しても1日24時間と限られているわけですから、どこかで振り分ける必要がある。

 業績を伸ばしたいから、効率化を図る。ある程度効率化された状態になると、人手を増やさないと業績は伸びなくなる。

 その「ある程度効率化された状態」に、なっているかどうか。御社の見極めは出来ていますか?
AIについてはまた別の機会に考察しますが、人間の感覚というのはとにかく主観的で曖昧なものです。「これくらいなら大丈夫」ではなく、一度きちんと現場の状況を見極めることが残業数を減らすことにつながっていく。というお話でした。

 それでは今日も頑張ってまいりましょう。


1件のコメント

戦術と現場とリスキリング(12月8日) – 深天舎ブログ「Deep Sky 19156」 · 2022年12月8日 11:24 AM

[…]  以前に、経営者が現場を離れてから何年経つか、という話をしました(その記事はコチラをクリック)。現場を離れた経営者は、自分が現場にいた頃の感覚で現場を判断してしまいがちです。しかし、その感覚が現代の現場に即しているのか? 適正な判断を下せるのか? […]

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